そもそもShinosの篠原勝氏はTRICERATOPSとして活動する僕のギターテックとして、全国ツアーやイベントで、ステージを作り上げるチームの一員の中でも欠かせない存在である。僕は機材面やサウンドメイキングにおいて100%の信頼を寄せている。そんな篠原さんの”アンプ職人”への夢はかなり昔から知っていたのだが、時が経ち、今やたくさんのアーティストが彼の生み出したアンプを使用している。篠原さんは夢を実現させた、いや、さらにその夢を大きくしている最中だろう。
そんな彼と、あるライブの打ち上げの席で隣同士になり、僕はほろ酔いついでに、かねてから手に入れたいと思っていたアンプ(そしてそれは売っていない!)のイメージを伝えた。「篠原さん作れます?」「作りましょう。」「ホントに!?」僕は嬉しくなり、その辺にあった紙に、こんな形で、大きはこれくらいで、色はこんなのがいい、といった具合に理想のアンプの絵を描いて篠原さんに渡した(笑)酔いも覚めた後日、メールにて本格的なやり取りを開始したが、全てはその打ち上げの席での僕の落書きのような絵が元になっているのだ。そしてそれを篠原さんは最高のサウンドというオマケを添えて具現化してくれた。それがSW-1である。
まずビジュアル的に僕が欲しかったのが「縦長のギターアンプ」だ。そう、ビートルズが使用したVOXのAC-100(スーパービートル)に代表されるように、これは僕が好きな1960年代のイメージである。テスコも’60年代には縦長のアンプを販売していた。しかし理由は分からないが、現在では縦長のギターアンプはほぼ姿を消してしまった。だからこそだ。絶対にステージ映えするはずだ。そして重要なポイントとしては、可能な限り小さなアンプにしたかった。モノを所有する際に「かわいい」は絶対に重要なポイントだと思うからだ。同じセパレートタイプでも、マーシャルアンプ等と並べると、SW-1はかなり小振りである事が分かってもらえるだろう。とはいえその箱の中に12インチスピーカーを縦に2機、ギュっとマウントしてある。そのパワーは想像してもらえるはずだ。
詳しい仕様は商品の説明文に任せるとして、一つ言えるのは、ギターの音をそのまま引き出すアンプ。(映像で言うなら画素数が高いみたいな?)これは当たり前の様だが違う。僕みたいなエフェクターをあまり使わない「素材の味重視」タイプの人には、そのナチュラルなオーバードライブ・サウンドを気に入ってもらえるだろう。逆に、ピュアなアンプだからこそエフェクター乗りもいいので、僕とは真逆のエフェクティブ・サウンド志向の人にも使ってもらって、可能性を広げて欲しい。
アンプが完成した時、長細くてビルみたいだなぁと思ったので、デザイナーの友達にロゴを作ってもらい、それをプレートにしてサランネットに取り付けた。なので通称『THE BUILDING』。いろいろな場面で、時に激しく、時に優しく、あなた色に染めつつ長く愛してもらえたら、こんなに嬉しい事はない。
和田 唱(TRICERATOPS)